ピアノ伴奏は、左手の使い方で大幅に雰囲気が変わります。ベース音を鳴らすだけでなく、複雑なリズムの表現を可能にして、より本格的なアレンジにすることが可能です。
この記事では代表的な左手の使い方と、発展させるための考え方について解説していきます。
この記事のポイント
- ピアノ伴奏における左手の役割についてわかる。
- 代表的な左手の音使いについてわかる。
- 左手のアレンジを考える際のポイントと注意点がわかる。
1.アレンジにおける左手の役割について
左手の主な役割として、「ベース音を鳴らす」だけでなく「リズムを発展させる」ことができます。
a. 左手リズムなし
左手はベース音を鳴らしただけの状態です。
b. 左手リズムあり
右手で刻まれるリズムに対し隙間の音を加えることで、リズムに動きが加わります。このアイデアは左手のアレンジにとても有効であり重要です。
このアイデアを元に、左手の音使いやアレンジについて詳しくみていきましょう。
2.ルート弾き
もっとも基本的なアプローチが「ルート弾き」です。これまで演奏してきたコードのルートをそのまま演奏することです。
ただし、オンコード(分数コード)の場合は、「ベース音として指定されている音」を演奏します。
ルートのみの演奏は、このような落ち着きのある安定した雰囲気を作ることができます。
3.オクターブの活用する
次によく使うのがオクターブの音の使用です。音が上下に跳躍するのでより動きのある表現ができるようになります。
1. ルートのオクターブ上
オクターブ上の音を使用すると、左手に音の跳躍が加わります。同時に左手の小指と親指を使い分けた演奏になるため、リズムを複雑に聴かせることができます。
ルートのオクターブ上の音が右手のコードの押さえ方と重なる場合はこの弾き方ができないため、ルート弾きを併用して使うことが多いです。
2. ルートのオクターブ下
オクターブ下の音への移動は、音の跳躍がより印象的になります。
奏法の性質上、あまり頻繁に取り入れることはありませんが、印象が強い音使いなので多用するとくどくなり注意が必要です。
3. オクターブ同時
ピアノの迫力ある演奏は、「左手のオクターブ同時演奏」によるものといっても過言ではありません。
単音で鳴らした時と比べて、迫力や音の厚みが違うのがわかると思います。
このような迫力ある奏法は、楽曲のクライマックスなどの盛り上がる場面で使用すると効果的です。
4.コードトーンの活用
ルートのオクターブが扱えるようになったら、次はコードトーンを活用しましょう。コードトーンを使用すると難易度が飛躍的に上がりますが、とても充実したサウンドを得ることができます。
コードトーンは、「通常のコード」と「オンコード(分数コード)」で使い方が変わります。
- ベース音がルートの場合
- 転回形によるオンコード
- その他オンコード
それぞれの違いについて見ていきましょう。
1. ベース音がルートの場合
ベース音がルートの場合は、基本的に各コードの第五音(五度)を使用します。
左手のオクターブの間に五度の音を加えることで、伴奏に音の動きを加えてより豊かなサウンドが作れます。
左手でコードトーンを使用する際のポイント
第5音(5度)はルートから完全五度音程になり、コードに対する親密度が高い音になります。対して、3度の音は低音域で音が濁りやすいため、使用には注意が必要です。最初のうちは使い分けが難しいので、5度を中心に使い感覚を覚えていくのがよいでしょう。
実際にコード進行に当てはめてみましょう。
左手にオクターブ以外の音が加わり、躍動感がでましたね。4小節目「Dm」で弾いているような8分音符のアルペジオも実際の演奏でよく使われます。
2. 転回形によるオンコード
転回形によるオンコードとは、「コードトーンがベースにくる転回形のこと」です。
ルート以外のコードトーンをベースに据えた場合、完全五度の音はコード進行に合わないため、上記のようにコードトーンを使用します。注意点としては、低い方のコードトーンは濁りやすいため、基本的に高い方のコードトーンを使用するのがよいでしょう。
こちらも実際にコード進行に加えてみましょう。
「Em/G」「C/E」のところに加えてみました。さらに複雑な音使いに感じたかと思います。
このようなオクターブ以外の音使いを覚えておくと、左手のアレンジを大きく発展させることができます。
上記デモ演奏では、アレンジをわかりやすくするため積極的に音を追加していますが、実際の楽曲では雰囲気に合わせて左手の音使いを考えていきましょう。
3. その他オンコード
前述の「転回形によるオンコード」以外にもいくつかオンコードの種類があります。
- ベースペダルポイントによるオンコード
- パッシングコードとしてのオンコード
- 代理コードとしてのオンコード(サブドミナントの代理など)
上記はこの楽曲では登場しないため詳しくは触れませんが、いずれにせよオンコードの際のコードトーンの使用には注意が必要!というを頭の片隅に置いておきましょう。
5.左手のアルペジオを加える
左手の音使いは白玉系アプローチにも応用できます。下記の記事でアレンジした内容に、左手の音使いを組み合わせてみると下記のようなアレンジを作れます。
右手と左手が絡みあって、流れるような美しいアルペジオですね。
このアレンジでのポイントは、右手と左手の絡み方です。右手のが4分音符と付点4分音符になっている箇所に注目してみてください。同じリズムの連続は単調になりやすいですが、このようにリズムを組み合わせると複雑なアレンジに聞かせることができます。
ぜひアレンジをする際の参考にしてみてください。
まとめ
紹介した左手の音使いはピアノ伴奏の基本中の基本であり、もっとも汎用性の高い奏法です。まずは、今回紹介した代表的な音使いが自由に使える状態を目指していきましょう。
これらの音使いは伴奏のみならず、インスト部やソロピアノといったスタイルにも幅広く応用できます。
こちらに左手の使い方を覚えるためのエクササイズも用意しています。並行して練習してみてください。
この記事のポイント
- 左手の主な役割は「ベース音を鳴らすこと」と「リズムの発展」。
- 左手の代表的な音使いは「ルート弾き」「オクターブ」「コードトーン」。
- ひとつのパターンの連続は単調になりやすい。メロディーや雰囲気を考えて組み合わせることがポイント。