この記事ではリズムに対する理解を深めていきます。リズムと一言でいっても、とても幅広く感覚を掴むのが難しい分野です。
まずは、曲調を大きく左右する「ビート」「テンポ」そして、ビートの雰囲気を分ける「ハネ」について理解を深めていきましょう。今回は3つのトピックを紹介していきます。
- ビートパターンの種類
- テンポの分類
- 「ハネる」と「ハネない」の違い
これらの特徴を理解した上で、普段聞いている楽曲を意識的に聴くことでリズムへの理解や感覚が深まります。
1.ビートパターンの種類
ビートパターンとは、規則的なリズムに特定の名前が付けられているパターンのことです。例外はあるものの、ほとんどの楽曲は基本的に何かしらのビートパターンに分類されます。
今回は、ポップスで最もよく使われるビートパターンを紹介していきます。それぞれの特徴を知り、実際に楽曲をそのリズムの雰囲気を感じていきましょう。
1. 8ビート(エイトビート)
「8ビート(エイト・ビート)」は主に8分音符を中心に構成された、ポップスやロックの基本となるビートパターンです。スロー・ミディアム・アップ問わず幅広く使われる王道のスタイルでもあります。
8ビートの代表曲といえばこちらですね。
“Every Breath You Take” – The Police
2. 16ビート(シックスティーンビート)
「16ビート(シックスティーンビート)」は、「じゅうろくビート」とも呼ばれ、ファンク・ディスコ・R&Bのような曲調でよく使用されます。細かく刻まれたリズムとリズムの粒が揃った雰囲気が特徴です。
基本的にはドラムのキックを16分音符で表現することが多いですが、ベースや他の楽器で表現することもあります。リズムを細かく刻む感覚を掴んでいくことが大切です。
16ビートの楽曲はファンキーでダンサブルな雰囲気になります。代表的な楽曲を聴いてみましょう。
“Rock With You” – Michael Jackson
3. シェイクビート
「シェイクビート」は、8ビートにスネアドラムを16分音符で加え、少しスキップするようなビートが特徴です。なぜこのような名前になったのかは諸説ありますが、8ビートに16分音符を「シェイク(混ぜる)」している感覚から来ているといわれています。
シェイクビートの代表的な楽曲はこちら。基本的に8ビートで構成されていますが、イントロやサビなどで16分音符を混ぜているのがわかると思います。
“Smells Like Teen Spirit” – Nirvana
4. シャッフルビート
シャッフルビートは、4分音符を3連符に分割して演奏されるリズムパターンです。具体的には、3連符の真ん中の音符を省略して、最初と最後の音を演奏します。主にブルース・ロックンロール・ブギウギ・ロカビリー・R&Bなどの音楽でよく使われます。
「タッタ、タッタ、タッタ、タッタ」という雰囲気のリズムが特徴で、音が跳ねているような軽快な雰囲気から「ハネる」とも表現されます。
“Sweet Home Chicago” – The Blues Brothers
5. ハーフタイム・シャッフル
「ハーフタイム・シャッフル」とは、シャッフルビートを半分のスピードで演奏することです。つまり8分音符の3連符が楽曲のリズムの基本になります。
シャッフルビートのスネアドラムの位置がズレることで独特な雰囲気になります。グルーヴ感が強いビートですが、通常のシャッフルよりゆったりとした雰囲気が特徴です。
“Home At Last” – Steely Dan
6. 4ビート(フォービート)
4ビートは主にJazzで演奏されるリズムパターンで、1小節の中に4分音符が均等に配置されます。ベースが4分音符で演奏する「ウォーキングベース」や、ドラムがハイハットやライドシンバルで刻むビートが特徴です。
また、4ビートは「スウィング」という言葉で表現されることも多いです。シャッフルのハネるとも似ていますが、シャッフルが明確にハネているのに対し、スウィングはやや平たく流動的で柔らかい雰囲気があります。
“Love Letters” – Kenny Drew Trio
2.テンポの分類
テンポとは楽曲のスピードのこと。リズムとは、4分の4拍子などの一定の周期の中に当てはめられているビートパターンや動き全般のことを指しますが、テンポはそのパターンの速さを表します。
つまり、「ビートパターンとテンポの組み合わせ」こそが「楽曲のリズム」とも解釈できるでしょう。
ここでは「テンポ」を速さに分けて3つに分類して解説していきます。
1. UP(アップテンポ)
BPM:130〜200、それ以上
アップテンポはスピード感があり、とてもエネルギッシュです。ジャンルによってはBPM300を超える超高速な楽曲もあります。全体的にパワフルなので、ライブの盛り上がるシーンによく演奏されます。
- 8ビート:エネルギッシュで躍動感がある。ロックやパンクなどの激しい音楽でよく使用される。
- 16ビート:ディスコやファンクなどのダンスミュージックでよく使用される。
- シャッフルビート:軽やかでスピード感がある。
“紅” – X JAPAN(BPM:約308-320)
“電波通信” – 東京事変(BPM:約145)
“Rock This Town” – Stray Cats(BPM:約202)
2. MEDIUM(ミディアムテンポ)
BPM:90-130程度
ミディアムテンポは全体的にバランスが良く、ジャンル問わず安定感のあるリズムになります。適度な速さなので、4つ打ちのダンスミュージックのようなグルーヴを感じさせる曲調のものが多いです。
- 8ビート:安定感のあるどっしりとしたリズム。
- 16ビート:ソウルやR&Bの細やかでノリのよい雰囲気。
- シャッフルビート:ブルースやロックンロールのような軽やかな雰囲気。
“Treasure” – Bruno Mars(BPM:約116)
“Billie Jean” – Michael Jackson(BPM:117)
“Isn’t She Lovely” – Stevie Wonder (BPM:118)
3. SLOW(スローテンポ)
BPM:40〜90程度
スローテンポは、落ち着いた雰囲気のゆったりとした曲調に用いられるテンポです。全体的にバラード調のラブソングや熱い感情を表現する楽曲が多いです。
- 8ビート:バラードやスローなロック曲で使われる。
- 16ビート:ゆったりしたR&Bのようなグルーヴのバラードに適している。
- シャッフルビート:ブルース系のバラードのような雰囲気になる。
ビートパターンによって印象が大きく変わるので、下記の楽曲を聴いてみてください。
“Let It Be” – The Beatles (BPM:約74)
“First Love” – 宇多田ヒカル (BPM:90)
“Have You Ever Loved a Woman” – Derek and the Dominos(BPM:約60)
3.ハネるリズムの区別について
「ハネる」とは、シャッフルのようなリズムの雰囲気のことを指します。
よって、「シャッフルビート」「ハーフタイムシャッフル」「4ビート」はハネるリズムで、「8ビート」「シェイクビート」「16ビート」はハネないリズムということです。
ハネないリズムのことを「イーブン」「スクエア」といった言葉で表現されます。また、ハネるリズムのことは「シャッフル」「バウンス」といった言葉で表現されます。
厳密に分類できるわけではありませんが、ざっくり下記のイメージです。
フィール | ハネない | ハネる |
---|---|---|
スウィング | ー | 4ビート |
8フィール | 8ビート | シャッフルビート |
16フィール(シェイク含む) | シェイクビート 16ビート(イーブン) | ハーフタイム・シャッフル 16ビート(バウンス) |
1. 16フィールのハネの割合
8フィール系の「8ビート」と「シャッフルビート」の区別はそこまで難しくはありませんが、16フィール系のリズム(シェイクビート含む)では、楽曲によって「ハネの割合」が大きく変わります。
ハネの割合とは「3連符寄りなのかイーブンよりなのかの割合」です。非常に区別しづらい部分ですが、たくさんの楽曲を聴き感覚的に掴んでいく必要があります。
いくつかハーフタイムシャッフルの代表的な曲を紹介しますので、それぞれのハネの違いを感じてみてください。
“Rosanna” – Toto
“Virtual Insanity” – Jamiroquai
“Sunday morning” – Maroon5
2. シャッフルとスウィングの違い
日本ではシャッフルとスウィングを一緒くたに考える傾向があるのですが、Jazzのビートとして定義される4ビートは「スウィング」というリズムになります。
- シャッフル:ハネる感覚が強く、3連符を均等に分けた雰囲気が感じられる
- スウィング:シャッフルよりハネの間隔が流動的で、より平たく柔らかい雰囲気
シャッフルを感じるなら「ブルース」「ブギウギ」「R&B」といった音楽、スウィングを感じるなら「ジャズ」を聴くとよいでしょう。
3. ビートパターンの分類イメージ
ここまで紹介してきたビートパターンの分類を図にしてみました。
「ハネの割合」と「フィールの細かさ」を指標として、それぞれのリズムがどのあたりに属するのかを視覚化したものです。個人的な解釈も含まれますが、ジャンルにもよって解釈が変わってくるため、もっとも一般的な感覚として表してみました。
リズム全般に言えることですが、すべてを言葉で定義できるものではありません。いろいろなジャンルの音楽をたくさん聴き、リズムの雰囲気や特徴を感じるところから始めてみてください。
まとめ
ビートパターンとテンポ、そしてリズムのハネについて解説してきました。
リズムの理解はまずビートとテンポです。紹介した内容を踏まえて改めていろいろな音楽を聴いてみてください。リズムは机上で学べるものではありません。たくさんを音楽を聴き、ライブやコンサート会場の大音量の環境で振動を感じることが大切です。
この記事をきっかけにいろいろな楽曲のリズムに触れてもらえたらうれしいです!