今回は、より実践的なコード理論について解説していきます。
コードはそれ単体では特に意味を持ちません。特定のキーの中で使われるときにはじめて音楽になります。キーの中でコードが繋がるとコード進行が生まれ、曲全体の構造や進行が理解できるようになります。
今回ご紹介する「ダイアトニックコード」をしっかり押さえておくことで、実際の演奏に活かすことができるようになります。とても大切な内容なので、しっかり理解を深めてくださいね!
1.ダイアトニックスケールとダイアトニックコード
ダイアトニックスケールとは、かんたんに説明すると「曲の土台となるスケール」のこと。
以前もお話しした通り、多くの楽曲はメジャースケールやマイナースケールを土台にして作られています。そのため、これらのスケールは「ダイアトニックスケール」とも呼ばれます。
そして、このスケールから生成されるコード群を「ダイアトニックコード」と呼び、これらのコードが楽曲の中で演奏される基本の和音になります。
具体的にどういうことなのかみていきましょう。
ダイアトニックスケール
「Diatonic(ダイアトニック)」という言葉はギリシャ語に由来しています。
- dia:「通して」「全体を通じて」
- tonic:「主音」
つまり、「ダイアトニックスケール」とは、特定のキーにおいてもっとも自然な形で展開されるスケールのことを指します。
実際にはキーの主音を起点としたさまざまなスケールがありますが、もっとも代表的なスケールが「メジャースケール」と「マイナースケール」です。これらのスケールが自然な音階としてもっとも広く使われているため、一般的にダイアトニックスケールと同じものと解釈されることが多いです。
CメジャースケールもAマイナースケールも、1オクターブ内に「全音5つ」と「半音二つ」の音程で構成されたスケールです。この音程の構成はダイアトニックスケールとしての特徴でもあり、これがモード理論の基盤にもなっています。
ダイアトニックコード
ダイアトニックコードは、前述のとおりダイアトニックスケールの音を使って構成された7つの和音群のことです。
必ず押さえてほしいポイント!
ダイアトニックスケールの特定の音をルート(根音)として選び、スケール内の音をひとつ飛ばしで重ねていくと和音ができます。ルートを変えながら同じ要領でできた異なる7つの和音群が「ダイアトニックコード」です。
重ねる和音の数によって以下のように呼び方が変わりますが、どちらもダイアトニックコードです。
ダイアトニックトライアド(三和音)
ルートを含めて3つ音を重ねた和音です。「メジャー」「マイナー」「マイナーフラットファイブ」の3種類で構成されます。
Cメジャースケールの場合はすべて白鍵なので、Cの押さえ方で横にスライドしていくだけです。簡単ですね。
ダイアトニックセブンスコード
ダイアトニックとアイアドに、さらに1音を加えた4音の和音です。緑色の音がセブンスの音になります。
「メジャーセブンス」「マイナーセブンス」「セブンス」「マイナーセブンスフラットファイブ」の4種類で構成されます。
2.ディグリーネーム
ディグリーネームとは、スケールやコードを数字で把握するための考え方です。
主音を起点に順番にナンバリングすることで、スケールやコードを構造的かつ相対的に理解することができます。
詳しくみていきましょう!
ディグリーネームの表記
ディグリーネームは基本的にローマ数字で表記します。そのスケールの音が何度の音なのか、そのコードが何度の和音なのかを表すことができます。
ダイアトニックスケールのディグリーネーム
このように1〜7でナンバリングすることができます。
ダイアトニックトライアドのディグリーネーム
ダイアトニックトライアドの1〜7のコードは必ず下記の規則性になります。
- I = メジャーコード
- IIm = マイナーコード
- IIIm = マイナーコード
- IV = メジャーコード
- V = メジャーコード
- VIm = マイナーコード
- VIIm(b5) = マイナーフラットフィフス
ダイアトニックセブンスコードのディグリーネーム
ダイアトニックセブンスコードも必ず下記の規則性になります。
- I△7 = メジャーセブンス
- IIm7 = マイナーセブンス
- IIIm7 = マイナーセブンス
- IV△7 = メジャーセブンス
- V7 = セブンス
- VIm7 = マイナーセブンス
- VIIm7(b5) = マイナーセブンスフラットファイブ
上記はKey=Cで示したもので、音名やコードネームは実音での表記になりますが、ディグリーネームは相対的なのでキーが異なっても変わることはありません。
ディグリーネームのメリット
ディグリーネームを利用すると楽曲の構造が理解しやすくなります。特にコード進行の分析に役立ったり、異なるキーの楽曲との比較や転調もやりやすくなります。
例えば下記のコード進行をディグリーネームに変換して、キーを変えてみましょう。
上記をKey=Gに変換してみましょう。
このように各キーの何番目のコードなのかがわかると、移調がとても簡単にできます。キーを越えて楽曲を理解するために、ディグリーネームの理解は必要不可欠です。
ローマ数字が読みづらければ、最初のうちは数字に置き換えてみてもよいでしょう。自分なりに工夫して理解を深めてみてください。
3.ダイアトニックコードを使ったコード進行例
ここではダイアトニックコードを使ったコード進行をいくつか紹介したいと思います。
ダイアトニックコードだけを使った部分をピックアップしてみました。楽曲全体を通してもほぼダイアトニックコードだけで構成されており、ダイアトニックコードの重要性を感じられるかと思います。
Church on Sunday / Green Day
ピアノ曲ではありませんが、とてもシンプルなコード進行だったのでピックアップしてみました。イントロとAメロは同じコード進行の繰り返しです。チェックしてみてください!
「I – IV -V」のシンプルなコードの繰り返しですね。
That’s The Way It Is / Céline Dion
こちらの楽曲ではサビを抜粋してみました。2小節のコード進行が繰り返されているのがわかりますね。
天体観測 / BUMP OF CHICKEN
こちらの楽曲ではAメロを抜粋してみました。とてもシンプルなコード進行です。
まとめ
ダイアトニックスケールとダイアトニックコードについて解説してきました。
コードブックなどでコードを闇雲に暗記しようとする人がいますが、ポップスを弾きたいのであればこのやり方はナンセンスです。弾きたい曲のダイアトニックスケールとダイアトニックコードを優先的に覚えたほうが圧倒的に効果的です。
この記事は必ず理解してほしい内容なので、何度も復習して理解を深めてくださいね!